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Shinさんの作品 「秋のスイス・小さな村々の祭り "サン・セルグの牧下り"」

  • ■列車: SBB/IR、IC、ICN、ローカル線
  • ■旅先: スイス/St-Cergue
  • ■時期: 2012年9月29日
秋のスイス・小さな村々の祭り 
 妻と私の共通の趣味は唯一旅行である。海外への旅もヨーロッパを中心に年数回いつも一緒に出掛ける。世間で言う後期高齢者ではあるが旅が続けられる間は幸喜高齢者でありたいと願っている。

 今年の秋も昨年に続いてスイスの小さな村々を訪ねることにしスイスセーバーパス(1か月)を求めた。

 私達の旅はその時の目的に沿って、拠点地とホテルだけは事前に決め、旅程に沿った日々の行程は現地で天気予報を見ながら行き先を変えるなど臨機応変な旅スタイルである。この様な私達の旅をダイナミックに実現してくれる強力な助っ人がスイスパスである。

 今回は秋の収穫期に行われる"村々の祭り"を見ることを一つの目玉にし、9月21日から10月18日まで約一か月間の旅であった。拠点地は、チューリッヒ・ローザンヌ・シャモニー・ツェルマット・グリンデルワルド・ベルン・ビュール・ルツェルンの8か所にした。

 祭りに関しては、この期間内にスイス各地のイベント数は100を超える程(政府観光局資料)多数あったが開催日が週末に集中するため、拠点のホテルから無理なく日帰りのできる場所を見つけ出すことに苦労した。結果的には「ヌーシャテルのワイン祭り」「サン・セルグの牧下り」「ミューレンのチーズ祭り」「ヒューリィの栗祭り」などを見ることができた。

 中でも、<Desalp de St-Cergue=サン・セルグの牧下り>は最も印象的であったので是非紹介したい。

 そもそも、「デザルプ=牧下り」は私にとって馴染みのない言葉であったが"春に山上の牧草地(アルプ)に放牧された牛や羊とその世話をしていた牧童たちが冬を前に一斉に山を下り、村に帰ってくる"というアルプスの伝統的な風習をこの様に呼称するようだ。今やこれが村、地域の一大イベントになっている。

 祭りは例年9月の最終土曜日とされ、今年は9月29日であった。この日、私はローザンヌに滞在中だったので、ローザンヌからジュネーブ行きIRに乗りニヨン駅で下車。ここで、ローカル線<Nyon~St-Cergue~La Cure行き>に乗り換えた。電車はオレンジ色の3両編成で私の乗った車両は木製の椅子で黄色の艶出しが美しくレトロ感もあった。途中駅からは家族連れも大勢乗り込んできたので私自身もワクワクしてきた。30分程でサン・セルグ駅に到着。駅前からは人通りの後について行くと自然に祭り会場に着いた。生憎の雨模様だったが街中の賑いようは想像を超え、人垣の前に進むのも容易ではなかった。

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 雑踏する路上には屋台が立ち並び中を覗き見しながら歩いていると辺りが何やら騒々しくなってきた。杖のような棒を持った牧童たちと数十頭の牛が近づいてくる。先頭の若い牧童が威勢のいい呼び掛けで"牛が来るぞ!道を開けて!後ろに下がって!"(想像)と先導して来る。その後には伝統の民族衣装をまとい精悍な顔立ちの牧童たちが続いている。そして列の最後は頭に花飾りを付けた牛たちのお通りである。

 実はこの牛たちの行進が見ものなのである。強烈なカウベルの響きとアスファルトの道を力強く踏み込む蹄の音、牛どうしの体が接触して湧き昇る湯気。更には観衆からの拍手、指笛、掛け声などが相まって凄い迫力となる。牧草地で長閑に草を食む姿からは想像もできない勇壮な歩行は彼らの"村への凱旋シーン"を見る様だ。列の中には箱車に乗った牧童犬も見られ、最初の一団を見ただけで、この祭りが放牧に関わった全ての人・動物に対する感謝と歓迎のイベントであることを合点した。

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 この様な一団が山から続々と下りてくる度に村人や観光客の興奮が続くのである。それを待つ間、路上ではダンスをしたり、地元特製のチーズやワインを肴に歓びを表現する村人達、屋台に並ぶ特産品や郷土料理に群がる観光客など様々である。私たちの隣でベンチに陣取っていた村のおじさん達も珍しい日本人観光客に気付き乾杯をしたり、美味しいチーズを食べきれない程振舞ってくれた。午後1時前には全ての一団が山から下りきり祭りは無事終了した。

 気がつけば、賑うカントリーロードも牛たちの黄金色の置き土産が流れだし、何時かイエローロードに様変わりしていた。4時間程度の短い祭りではあったが一人の観光客として十分楽しむことができ、一見の価値ある催しであった。

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