ホーム > 乗車レポート > 心配性?な初体験列車

乗車レポートギャラリー

マキコ・ポンテカーロさんの作品 「心配性?な初体験列車」

  • ■列車: イーエススター
  • ■旅先: フィレンツェ~ヴェネチア
  • ■時期: 2010年8月9日
心配性?な初体験列車
 イタリアは花の都フィレンツェ(サンタ・マリア・ノヴェッラ駅)から、水の都ヴェネチア(サンタ・ルチア駅)へ。私の海外列車の初体験は、イーエススター2時間の旅だ。両親と3人で、大きなスーツケースを抱えて列車に乗るというのも初めてのことで、てんやわんやの弥次喜多道中となった。

 まず駅に改札口がないのにびっくり。その代わりというか、黄色い箱形の機械が構内のあちこちにある。その名もオブリテラトリーチェという自動刻印機だ。これに切符を差し込み、日時を刻印してから乗らないと、外国人でも罰金モノなのだそうで、すぐにやった。

荷物の絵.jpegのサムネール画像
 目指すホームに行くと、すでに大荷物の旅行客がたくさんいた。列車がホームに入ってくると、みな、ガラガラとスーツケースを転がし、ナップサックを担ぎ、ダーっと目当ての号車に急ぐ。我々は、幸いポーターさんを頼んでいたので助かった。というのも、デッキの荷物置き場の「争奪戦」になったからである。ポーターさんはカートに乗って、他の乗客を追い越し、その後を我々が追う。結局、ほぼ一番乗りで我々の荷物は納まった。体の大きな外国の人たちと競争したら、とてもかなわなかっただろう。気の毒に、遅れてきた乗客は、置き場所がなくなった。座席の上の荷台にスーツケースを持ち上げて、差し込もうとしていたけれど、どう見ても無理。結局車両を出ていった。(どこかに場所を見つけたらしく無事戻ってきたが)

 列車が動きだし、腰が落ち着くと、周囲からイタリア語や英語の他、ロシア語?ドイツ語?・・・と様々な言語が聞こえてくるのに気付いた。流石は世界有数の観光地、様々な国の人たちが乗り合わせている。我々はアジア代表という感じだろうか。飛行機の機内サービスのようにして配られたビスケットをかじり、ブラッドオレンジジュースを飲みながら、そんな感慨にふけった。

 その時である。「ねえ、デッキに置いたままのスーツケースは大丈夫なの?」と母。そうそう、スーツケースのことは、実は出発前からずっと心配していたのだった。まあ、滅多なことはないだろうけれど、ここはイタリア、泥棒に盗まれないだろうかと。という訳で、交代交代で(というか、だいたい私が)、デッキに行って見張ることになった。ちなみに、他の乗客は、誰も荷物のことなど気にとめる様子もなかったけれど。

フェラーラ.jpegのサムネール画像
 スーツケースをちらちら見ながら、デッキの窓から外を眺めた。向こうに時折見えてくる村々が、何となく似ていることに気付く。教会の鐘楼らしき塔があって、それを囲むように家が並ぶ。木々の緑に、建物の壁の灰色、それに屋根の赤茶色が加わると、まるで風景そのものが緑・白・赤のイタリア国旗「トリコローレ」をかたどる。

 ボローニャ、フェラーラ、パドヴァ、と日本でも名を知られた地方都市で停車していったが、どの駅もひっそりしていて、乗降客はほとんどいないようだった。あくまでも、のんびりモードである。

 結局、泥棒はもちろんのこと、乗客の誰一人として、我々のスーツケースに目もくれないうちに、列車はヴェネチアに到着した。

 いや、一人いた。降り際、乗降口の混雑の中で、母がスーツケースを引き出すのに困っていたら、後ろにいた白人男性が、おもむろに、車外に軽々と運び出してくれたそうだ。お礼を言おうと、母は慌てて追いかけたが、ホームの喧噪にまぎれるように、彼はどこかに行ってしまった。

 残念なことに、私は一人、座席に忘れ物がないかと調べていて、その素敵な場面に居合わせなかった。

ギャラリーに戻る